「モンブラン＝栗」のイメージがあります。秋が巡ってくるとモンブランが恋しくなると感じる人も多いでしょう。その理由はシンプルで、大多数のモンブランは栗を使用しています。見かけの上ではカップケーキのようなボディに、クリームが螺旋状に盛られ、その頂点を飾るのはマロングラッセや栗の甘露煮、それが伝統的なモンブランの姿です。

モンブラン=栗と言ってしまうと勘違いにつながるかもしれません。その誤解が生まれたのは、モンブランというデザートが日本で始めて作られたときのこと。初めてモンブランを製作した洋菓子店の主人が、栗をメインに使用したレシピを作ったからです。この主人はモンブランの普及を願ったので、商標登録をせず、結果としてこの栗入りのモンブランが日本全国に広がる一因となりました。

しかし現在、栗が欠かせないとされるモンブランも、多種多様なまま定番スイーツとして各地の洋菓子店で親しまれています。

モンブランは、フランス発祥のケーキで、その特徴は以下のようなものがあります。

栗の風味と食感: モンブランの最大の特徴は、栗のペーストやクリームを使用しており、濃厚で風味豊かな栗の味わいを楽しめることです。栗のペーストを使用したクリームや甘露煮、栗のみじん切りがケーキのトッピングに使われることが一般的です。

ベースとなるケーキ: モンブランのケーキ自体はしばしばスポンジケーキやムース、またはマロン（栗）のペーストを練りこんだケーキ生地を使用しています。その上に栗のクリームや甘露煮を絞り、栗を象徴する独特の模様を作ります。

見た目の特徴: モンブランの最も特徴的な点の1つは、その外観です。トップに栗のクリームや甘露煮を絞り、独特の細い線状の模様を作り出すことが一般的です。これはモンブランの山々を模したもので、その名前もフランス語で「白い山」を意味します。

季節性: 栗は秋の季節に旬を迎える食材であり、モンブランもその季節によく食べられるケーキの一つです。この季節になると、栗の美味しさを生かしたモンブランがお店や家庭で楽しまれます。

皆さんが日本で一度は目にしたことがあるであろう、モンブランの黄色は日本生まれなのです。初代「モンブラン」店主の迫田千万億さんが1933年に東京自由が丘で開業した洋菓子店で、黄色いモンブランを誕生させました。その黄色は、和菓子店で見かけるクチナシで着色した甘露煮栗が由来となり、その独特の色彩は日本全国のモンブランに影響を及ぼしました。

そして、モンブランの色が黄色から茶色に変わる要素は、フランスの「サロン・ド・テ アンジェリーナ」の影響が大きいのです。その店が1984年にプランタン銀座に出店し、茶色のモンブランが認知され始めたのです。その特徴的な色は、渋皮ごと潰した栗の色からきており、今では茶色のモンブランが主流となっています。このことから、「モンブラン＝黄色」か「モンブラン＝茶色」とイメージが分かれるのは、それぞれがモンブランと出会った時代による影響と言えそうです。

とはいえ、モンブランはまだまだ進化を遂げているデザートです。黄色や茶色だけでなく、さまざまなバリエーションが広がり、新たなモンブランが出現しています。特に日本では、抹茶、いちご、チーズ、さつまいも、かぼちゃなど、様々な素材を駆使したモンブランが登場。フルーツや野菜のペーストを加えることで、カラフルで多彩な味わいを提供しています。各地には地元色を反映したモンブランも多く、ケーキ屋さんごとに個性を競っています。

そう、モンブランはただのスイーツではありません。美味しさの奥に潜む深い物語、職人の労と技術、そして名づけられた背景が共に揃う一級品。それがモンブランの本質です。この洗練された味わい自体が、モンブランの深い魅力を伝え、未来へと受け継ぎます。おいしい一口が、長い伝統と技術を噛みしめる旅になるのです。